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本品は、イスラム初期末、1000～1100年頃に制作された、多色のイスラム折込モザイク・特大ソロバン玉です。黒の胎に、鮮やかな黄、白、くすんだ赤茶と緑の4色で、ほぼ左右対称の紋様が折込製法で施されています。ただ、本品では左右対称はズレも見られ、アラジンの魔法ランプから出る煙ように、ゆらゆらモチーフにも見えます。\r　本品の主モチーフは、黒の胎に鮮やかな黄を用い左右に引き延した曲線菱形モチーフ3つで、この菱形から黄の線が下部に伸び、下部に上下に圧縮された曲線で小さな「あぐら」風モチーフが施されています(1-6枚め上向き)。\r　大きな黄の曲線菱形モチーフの1つでは、ほぼ同形の小モチーフが黒と不透明白で中央に描かれ、他の2つでは、成形が整わなかったためか、変形や細長の小さな曲線菱形が黒だけで描かれ、また、黄の縁に黒の細線、やや幅広の白帯、黒の細線が施されています。\r 4色のガラスのうち、赤は、曲線の菱形モチーフの間に描かれた横広がりのモチーフに、白はその中央に、くすんだ緑は赤の曲線菱形の内側に用いられています。明るい4色が、生き生きと活力に満ちた雰囲気をもたらしています。\r　研究書 A Bead Timelineには、1000～1100年ころ、初期イスラム期末期のモザイク・折込ビーズが掲載され、白と黒の線紋を胎に這わせて幾何学紋を繰り返し、無限の広がりを示すアラベスク・モチーフ・ビーズとともに、多色モザイク折込大玉も掲載されています。これらは、生に関わる護符の強い力をもつとされます。\r　掲載の1つは、10-12C制作の、穿孔面上下に円環が付した折込玉で、イスラム期ビーズ職人の偉大な革新と評されます。もう1つは、大きなサイズで、左右対称の多色モチーフをもつ通称ミラー・ビーズで、黒の胎に白・くすんだ緑の紋様、青緑の胎に赤茶、黒、灰色の紋様のビーズが掲載されています。\r　モザイク折込玉は、モザイク片を成形し、鉄製の芯軸の周りに巻いたり撮むなどして、西アジアやロシア南部などで制作と言われます。掲載の暗い緑と青の多色折込玉に比べて、本品は鮮やかな4色を用い、掲載にも値する美玉です。生に関わる護符の強い力を凝縮した本品は、歌舞伎の隈取りを思い起させます。顔全体の隅取りも魔除けを意味し、似た側面があるのでしょうか。\rサイズ縦　約20㍉　幅　約24㍉弱　孔径　約4㍉

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